書評の最近の記事

ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争

児島譲の朝鮮戦争あたりは読んだのだが,米国からみて朝鮮戦争とは何だったのか,という問題意識で書かれた本を読みたくて,買ってみた.

著者は,「暴虐なる大日本帝国から解放された朝鮮半島が,さらに共産主義者の侵略に晒されているので,南側の市民を守るための戦争」という見方なのだなと.いろいろ間違えている見方だと思う.あくまで太平洋の安全を確保する,そのための重要拠点である日本列島を守るための縦深(=朝鮮半島)を確保するための戦争,これが朝鮮戦争だ.さしたる資源がない朝鮮半島の,米国にとっての(そして日本にとっての)価値はそれだけ.

# 中国の介入が地続きの満州から行われたことによって,日本帝国が満州を確保しようとした意味も理解できると思うのだが.まあ,ご愁傷様ですな.

ただ,それだけでは戦えないのだろう.だから,「かわいそうな市民を助けに行く正義」を声高に叫ぶ.たとえ,それがファンタジーであったとしても.未だにそのプロパガンダに縛られているのは滑稽だが,自ら蒔いた種なので,最後まで面倒をみていただきたい.

# あと,「マッカーサーの戦争」という見方も出来る.「半島は空軍力だけで防衛できる」という彼の予断から南進が始まり,仁川上陸によって軍人としての最後の名声を得,「中国は介入しない」という予断から泥沼化し,彼が司令官から解任された後はさしたる大規模衝突もなくだらだらと休戦会談が行われ,休戦した(積極的に続けるという闘志を燃やす指揮官がいなくなった).

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国 (Amazon.com)

東アジアの歴史とは,ユーラシアの長江・黄河流域を支配する勢力の栄枯盛衰と,それによる周辺への影響,ということになるであろう.

幕末-明治維新に限っても,アヘン戦争での清の敗北の余波,という見方である.(太平洋の対岸の国がちょっかいをだした,という影響は当然ある.)

明治以降,日本は,英米露清(+仏独)とのパワーゲームを戦っていた.1945年,結局ゲームに負けた日本は,そこから降り,米がソ(と中)との東アジアパワーゲームをプレイしていた.日本はともかく,米は明確に,マラッカ海峡-南シナ海-東シナ海-日本海の海洋通商路を自国の管理下に置くことが,ゲームの目的であると認識していたし,その目的のために様々な手段を用いた.

かつては,大陸の勢力も,それで満足していた.海上通商路に手を伸ばす余力が無かったからである.

いまや,米国にかつての圧倒的パワーは無いように見え,また,中国が世界第二位の経済力を持った今,この海上通商路を巡る争いが東アジアの課題となっている.

そうした中で,自称「アジアのバランサー」韓国がどういった考えをもち,どのようにこの状況に対応しようとしているのか,を主題としたのが本書である.
この中で述べられている「中韓連携」とそのバランスとして「北朝鮮-米(+日)」の連合が成立する可能性などは,(以前の私ならばあり得ないと思っただろうが)おもしろい指摘だと思うし,あり得ない話ではないと感じる.

いずれにせよ,長期的にみて米国は太平洋の対岸に帰っていく,帰らざるを得ないのではないだろうか.そうなったときに,どう大陸と向き合うのか,今から日本人一人一人が考えておくべきだろう.その点は,(あえてそうしたのだと思うが)著者は明確な主張をしていないが,「先に向き合わなければならない国(韓国)の選択をじっくり研究しながら,日本の対応を考えるべきだろう」という主張には同意する.そういった意味で,一読を勧める.


・・・が,それほど理性的・冷静な考慮が出来る人たちとも思えんし,防衛ラインを対馬海峡に引いて,日本は日本の道を行くしかない,というのが結論になりそうだが.どう考えても,「戦争やるやる詐欺」の南北対立にしか見えないし.

老いてゆくアジア(大泉啓一郎・中公新書)


なかなかおもしろい本に出会った.

本来の主題は,アジアにおいて日本以上に急速な高齢化が進んでいること,そしてその対策は日本以上に難しいこと,であるが,その前提として「人口ボーナス」とぃう見方が最初に説明され,なるほどと思った.

人口ボーナスとは,出生率の低下に伴う生産年齢人口(15-64歳)の比率の増加が,労働投入量の増大と国内貯蓄の増加をもたらし,経済成長を促進する,という見方である.このモデルで行くと,産業が「労働集約型産業(労働投入量の増大による)→資本集約型産業(国内貯蓄の増加による)」と進化する段階が「高度成長期」であり,それは,各国限られた時期にもたらされる.この時期を上手く利用出来るように各種施策がとられたかどうか,が実際の経済成長を決める.

当然,出生率の低下がある期間以上続くと,高齢化が進み,人口ボーナスの時期は終了する.その段階では知識集約型産業が主要産業を占め,人口ボーナスの時期に成長した経済力を利用して高齢者を養っていくこととなる.大抵のいわゆる「先進国」はこの段階である.

NIES諸国(懐かしい響きだ)はともかく,中国・ASEAN諸国は,この人口ボーナスの時期を使い切る前に高齢化が進行している,そしてそれは日本よりも速度が速いという.中国などは既に65歳人口が1億人を超える状況であり,今後益々増大する高齢者を「あの」経済力で養っていくという,手荒い状況だ.

本書内でも明確な理由は説明されていないが,世界的に出生率は低下していることなど,自分にとっては目新しいデータが示されており,説得力がある.
# 「んじゃ,少子化対策とやらは,無駄なんじゃん」と思ったのは秘密だ.

きちんとした基礎データをもとに議論しないと,どんな「すばらしい」施策も砂上の楼閣なのだから,こういった見方こそ,知らしめるべきではないのかね,マスメディアに関わる諸君.

あきた4コマち!

津軽人ならば,実際に頭の中でイントネーション含め再現すると翻訳無しでおk.

ただし,活字にすると途端にわかりづらくなるなあ.

ダイヤグラム

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国鉄列車ダイヤ千一夜

「鉄道ダイヤ情報」での連載をまとめたもの.

これを,このときに読んだので,単線区間でのダイヤ設定に思いをはせたりした.

ダイヤ作成時には,当たり前のことなのだが,車両・運転士・車掌運用,留置線などの設備,乗客ニーズなどすべてを勘案すること,が改めて認識させられた.

「文明」の地域差

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銃・病原菌・鉄 (上)
銃・病原菌・鉄 (下)

この本は,スペインのピサロによるインカ帝国皇帝アタワルパ拘束の場面から始まる.
数百人のピサロに対し,数万人のインカ帝国.人数の上では圧倒的少数であったピサロが,なぜインカ皇帝を捕らえることができたのか.

おそらく欧州諸国の最初の絶頂の瞬間である.これは,彼らの尺度で言うところの
「文明」がインカ帝国より進んでいたことの現れである.では「文明」の進みは,なぜ地域によって大きな差があったのか.

従来は,「人種論」あるいは「民族論」で片付けられた.だが,この著者は,それ以外の原因が主要因であるとしたならば,何が原因なのか,という視点でこの問いに答えてゆく.

詳細は本書に譲るが,なかなか説得力のある内容である.少なくとも欧州と関わりの深い地域においては.アジアにおいては,少々余計なお世話な記述も散見されるが,大筋においては興味深い.

現代日本における地域的特性と照らし合わせて見ることも有意義ではなかろうか.

鉄道地図 残念な歴史

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鉄道地図 残念な歴史

都市部近郊の鉄道路線はともかく、地方の鉄道路線は多かれ少なかれ「廃止」というプレッシャーの元で運行されている。

その中でも、「廃止」に猛威をふるったのが「国鉄再建法」であり、これを根拠とする「特定地方交通線」の廃止である。

ただ、なぜ「特定地方交通線」が生じたのか。という視点で書かれたのが本書である。

大正期の「政治主導」の結末が「特定地方交通線」だとすれば、現在でも参考になる部分が多いのではないだろうか。