昭和陸軍と人事

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昭和陸軍,といってすっと理解できる人がどれほどいるかはわからないが,「皇道派」と「統制派」の対立があった時代の歴史を調べている.お題目に掲げているのは天皇親政だとか昭和維新の達成だとか,きれい事なのだが,そもそもの出発点は人事の不満だった.

東京裁判でも問題となった「バーデン・バーデンの密約」とは,結局,薩長閥(というか,山縣有朋率いる長州閥)から陸軍人事の主導権を奪う,にすぎなかった.

すぎなかった,と言えるのは遠く隔たった我々だからで,彼らにとっては(特に陸大をでた「エリート」にとっては)大佐で予備役なのか,大将までなれるのかは大きなことだった.

余談だが,東条英機がこれらの運動に参加したのは,陸大一期主席でも大将になれなかった父親(英教)の恨みを晴らすためだった,らしいが,彼の父が大将になれなかったのは,どうも実戦(日露戦争)での戦績が芳しくなかったためというのが実情らしく,だとすると,彼の人生は,そもそも勘違いから出発していた.その彼が開戦時の首相であったことは,日本にとっても,そして彼にとっても,不幸なことであった.

閑話休題.

彼らの改革(人事権の奪取)は成功するのだが,その結果は,適材適所と信賞必罰を全く欠いた,欠陥だらけの人事(この人とかこの人とかこの人とかこの人とかこの人とか)となったことは承知の通り(これは,東条に人を見る目がなかったこともあるのだが).

何を言いたいかというと,組織の存在意義を忘れた運動は,結局害悪にしかならない.

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