「人口ボーナス→経済成長」という見方

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老いてゆくアジア(大泉啓一郎・中公新書)


なかなかおもしろい本に出会った.

本来の主題は,アジアにおいて日本以上に急速な高齢化が進んでいること,そしてその対策は日本以上に難しいこと,であるが,その前提として「人口ボーナス」とぃう見方が最初に説明され,なるほどと思った.

人口ボーナスとは,出生率の低下に伴う生産年齢人口(15-64歳)の比率の増加が,労働投入量の増大と国内貯蓄の増加をもたらし,経済成長を促進する,という見方である.このモデルで行くと,産業が「労働集約型産業(労働投入量の増大による)→資本集約型産業(国内貯蓄の増加による)」と進化する段階が「高度成長期」であり,それは,各国限られた時期にもたらされる.この時期を上手く利用出来るように各種施策がとられたかどうか,が実際の経済成長を決める.

当然,出生率の低下がある期間以上続くと,高齢化が進み,人口ボーナスの時期は終了する.その段階では知識集約型産業が主要産業を占め,人口ボーナスの時期に成長した経済力を利用して高齢者を養っていくこととなる.大抵のいわゆる「先進国」はこの段階である.

NIES諸国(懐かしい響きだ)はともかく,中国・ASEAN諸国は,この人口ボーナスの時期を使い切る前に高齢化が進行している,そしてそれは日本よりも速度が速いという.中国などは既に65歳人口が1億人を超える状況であり,今後益々増大する高齢者を「あの」経済力で養っていくという,手荒い状況だ.

本書内でも明確な理由は説明されていないが,世界的に出生率は低下していることなど,自分にとっては目新しいデータが示されており,説得力がある.
# 「んじゃ,少子化対策とやらは,無駄なんじゃん」と思ったのは秘密だ.

きちんとした基礎データをもとに議論しないと,どんな「すばらしい」施策も砂上の楼閣なのだから,こういった見方こそ,知らしめるべきではないのかね,マスメディアに関わる諸君.

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